ごはんマメ知識・こんなの知ってる?

普段何気なく使っている箸。最近は外食に出かけるとき「マイ箸」を持つ方も増えているようですが、今回はそんな箸についてのお話です。
「お箸をください」と言えますか?
結婚披露宴でフランス料理が出されると、ナイフやフォークをどう使うのかさっぱり分からないという話をよく聞きます。ナイフ、フォークを上手に使えないことが恥ずかしいと思っている日本人は多いようですが、もしも、西欧人が箸を使えないのを見たら、みっともないと笑うでしょうか。そんな人は、ほとんどいないでしょう。むしろ、彼らが使い慣れたフォークを用意してあげるのではないかと思います。ナイフ、フォークを使う自信がなかったら、「お箸をください」と言ってみてはいかがでしょう。いやいや、それはもっと恥ずかしいと思う方は、箸のことを知ってみれば、きっと誇りを持って堂々と言えるようになるかもしれません。そして、他国の人への気遣いは、箸と共に生きてきた日本人の中に培われた「人に対しての優しさ」だということも分かっていただけるのではないかと思います。
神が宿る箸
日本で箸食制度を採用したのは、聖徳太子だと言われています。遣隋使が中国の食事作法を伝え、それを真似たのが始まりです。もっともこれは宮中の話で、その頃の庶民は「手食」でした。手づかみで食事をする生活は、現代からでは想像しにくいものですが、箸食制度が本格的になったのは8世紀になってからです。宮中や儀式用に金属製の箸もありましたが、庶民は木々を削って作りました。そしてこれらの木々には、神が宿っていると考えられていました。食事を前に、箸を手に取って祈り、恵みをいただけることを自然の神々に感謝しました。現在の「いただきます」は、この慣習のなごりです。また、山に行った時には、その場で木を切って箸を作ったりしましたが、箸には自分の霊が宿るとも考えていたので、獣にいたずらされぬよう折って捨て、それによって霊を自分の元に帰すと信じられていました。今でもお弁当を食べ終わった後に割り箸を折って捨てる人がいます。霊が宿ると知ってかどうかは疑問ですが、かつてのなごりと思えば、神聖な行為にも見えますね。このほか、箸にまつわる信仰や言い伝えは各地に残っていますが、大自然の神々からの恵みを神が宿る箸によって口に運ぶ日本人の食事はなんとも崇高なものだと思えます。
心優しい箸食文化
箸を使う民族は、中国、朝鮮半島、台湾、ベトナムなどで、世界の約30パーセントですが、純粋な箸食は日本だけです。その他は、箸とスプーン、あるいはレンゲなどを組み合わせて使っています。日本のご飯は、粘り気があるため、レンゲなどですくわずとも箸で食べることができます。汁物は、器を持って口元に運べばスプーンも必要ありません。この器を持つ行為は、箸だけを使う食文化ゆえのものです。スプーンでご飯を食べたり汁を飲む韓国では、器を持つことはお行儀が悪い行為になります。このように食事に使う道具は食べ物や作法と関わりあっているのです。箸だけを使う日本だからこそ、つまみやすくて繊細な料理が生まれ、周りに不快感を与えずに食べるための美しい箸使いの作法ができました。人に対しての細やかな心配りと優しさは、純粋な箸食文化によって培われたものではないかと思います。この心は、異文化や多くの外国人を受け入れる国となった今でも、日本人の中にしっかりと刻まれているように感じます。
箸食の誇り
西欧で庶民がフォークを使うようになったのは17世紀以降で、日本よりずっと長い間、「手食」でした。スパゲティーをフォークに巻いて食べるイタリア人もその昔は手でスパゲッティを食べていたそうです。ナイフに関しては、家長だけが持ち、肉は取り分けて分配しました。狩猟民族らしい光景ですね。このような肉中心の取り分ける食事方法には、平たい形の器が便利です。洋食器が平皿と深さのあるスープ用だけで構成されているのはこのような理由からです。食事用の道具も器もいたってシンプルで、家族用に最低1セットあれば事足りてしまいます。これに比べ、日本では、大抵の人が自分専用の箸とお茶碗を持っています。これは西欧はもちろん、箸食の国でも珍しいことです。ちゃぶ台が登場するまでは、お膳も銘々でした。日本は、箸を大事にすることに始まり、お茶碗を手に持つゆえに、その形や材質、色柄にまでこだわる文化を育み、銘々用の食器を持つ規律のある作法まで作り上げました。文化の違いに優劣はつけられませんが、日本のことを知ると、その奥深さは充分に誇れるものだと思います。
箸から始める
フランスでは空前の日本ブームが続いているそうです。知人のフランス人は、パリで日本食を食べない理由を日本に来て本物を食べていることを自慢するためだと言っていました。身体に優しく、美しい日本料理を箸で上手に食べられるのは、ステータスだとか…。これを聞いて、少々恥ずかしくなりました。日本では今、箸を正しく持てない子供が増えているからです。これに伴い、箸使いのタブーや箸にまつわる迷信なども聞かなくなってしまいました。そういえば、鉛筆を正しく持てない子供が多いことも耳にしました。箸と鉛筆は同じ指を使います。 何世紀にも渡って継承されてきた文化を伝えるのは、大人の役目です。日本人が真の国際人になるのを望むのなら、まずは、正しく箸を使うことやから教えなければならないでしょう。「箸は命の杖」 と言われています。箸をしっかり持つことは、きちんと生きるための基本だということを先人は教えてくれているのです。
成長に合わせて買い替えてくれた箸の思い出は誰にでもあるのではないでしょうか。新しい箸でいただくご飯は、格別だったような気がします。箸には「命を新しく改める」という意味があるからなのかもしれません。
季節の節目に箸を替えてみるのもいいですね。何かが改まる。そんな気がします。


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