ごはんマメ知識・こんなの知ってる?

Vol.7ご飯とともに伝統の味を
皆さんは、ご飯にピッタリ!のものと言えば何を思い浮かべますか?今回は、知っているようで知らない、身近な伝統の味についてのお話です。
「御御御付け」って何?
「御御御付け」 この字を見て、読み方を迷う方もいるかもしれません。
これは、(おみおつけ)と読み、味噌汁のことです。言葉だけなら聞いた事がある方も多いことでしょう。
御を三つもつけてこれ以上の丁寧さはないと思いますが、どうして、味噌汁をこんな風に呼ぶのか不思議に思いませんか? 御御をつけた尊敬語や丁寧語には御御足(おみあし)などがありますが、これは相手が人間なので理解できます。しかし、食べ物に対して、さらにもうひとつ御をつけるとは、御御御付けは、それほどまでに尊いものということなのでしょうか。さらに、「付け」ということは、何かに付けるのか、付いているのか、どういう意味があるのでしょう。
付けの決め事
ご年配の方の中には、御御御付けを御付け(おつけ)と呼ぶ方もいます。実は、この御付けというのは、女房詞(にょうぼうことば)なのです。女房だから、奥さんが使う言葉などと誤解しないでください。室町時代の初期から宮中奉仕をした女官たちが使った隠語のような言葉のことです。これが後に町家の女性にも広がり、今でも使われている言葉になったのです。御付けは、味噌汁だけでなく、吸い物、麵つゆなど、汁物全般を表しますが、付ける相手は、主食になるもの。つまりご飯(麵類)です。御付けを身分の高い人にお出しする場合、さらに丁寧語、尊敬語をつけ、御御御付けとなります。御御御付けは味噌汁の丁寧な言い方ですが、女房詞では、御付けと略して汁もの全般をいうようになりました。お膳には、必ず汁を付けると決められていたので、御付けや御御御付けということばが生まれたわけですが、この決め事が形式化されたのは、室町時代の武家の礼法とともに確立された「本膳料理」です。今ではほとんどお目にかかれない形式ですが、一汁三菜、一汁五菜、など本膳に使われる言葉だけは聞いた事があるのではないでしょうか。
当たり前の形式に
本膳料理は、現代生活からは遠いもののようですが、日本料理が発達する基礎になりました。その後、江戸時代を経て、庶民風にアレンジされながらも現代に受け継がれている形式や言葉の中には、現代人にとっての健康的な食事の基礎があるような気がします。ご飯に御御御付け(味噌汁)。これを基本の形にし、おかずを三品つけて一汁三菜。最低でも守りたい形式ですね。最近では、おかずは無理でも、具をたくさん入れた味噌汁を、ご飯を食べなくても、せめて味噌汁を、と、どんどんハードルが低くなってきているようですが、味噌汁は、御付け。ご飯とペアなのだと、当たり前の形式にしてみてはどうでしょう。刺身に醤油・醤油にわさび、というように、なければ成り立たないものと感じるような食事を作っていってほしいものです。年間通して手に入る具だけでなく、その季節にしか味わえないものを使ってみるなど、味噌汁のアレンジは果てしなく広がって楽しめます。
もうひとつの伝統食
毎食、なければ成り立たない食べ物が、最近の日本にはなくなってきているようですが、お隣、韓国には、なければ成り立たない食べ物として「キムチ」があります。会社のランチでもキムチは欠かせず、誰かが必ず調達してくるそうです。
日本人にとってのキムチは、漬け物のひとつにすぎないのですが、韓国での位置は、主食に近いものなのかもしれません。日本人でもご飯に漬け物がないとだめだという人もいますが、そういう人の多くは、手作りの漬け物を食べて育ったようです。発酵食品である漬け物の香りは、人が嫌う腐敗臭と似ているため、美味しさを感じるには、訓練と味覚の発達が必要です。化学調味料に慣れてしまった若者には、漬け物嫌いも多く、自然が作り出す複雑な味を理解するだけの味覚が育まれていないようです。食品を発酵させて旨味を出しながら保存するという知恵は、革命的なことでした。この知恵の継承は、食べ慣れるという簡単なことで可能でしょう。まずは、いつも食卓にあるという環境を作ってください。今からでも遅くはないですよ。
御香香と御新香
御香香(おこうこう)も女房詞で、漬け物のことです。「香のもの」と言って、やはり本膳料理に出されます。懐石料理にも香の物はあります。おこうこうを田舎くさい食べ物でおしゃれではないと思っていませんか?
香りという字をふたつも重ねて、丁寧に御をつけ、なんとも風情のある食べ物だと思います。御香香は乳酸菌によって発酵するため、乳酸菌飲料などがない時代でも日本人はここから取ることができたのです。長期の保存がきくのも御香香の良さです。これに対して御新香(おしんこう)は、季節の野菜をさっと漬けたもので、長期保存がききません。乳酸菌も少なく、塩分も控えめですが、爽やかな味わいです。一夜漬けなど、サラダ感覚でいただけるものもあるので、漬け物入門として、ぜひ手作りしてほしいですね。
御御御付けも御香香も残しておきたい伝統の味です。ご飯とともに味わう美味しさは、格別だということを伝えていってほしいと思います。そして、女房詞のお話も食卓に添えてみてはいかがでしょう。


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