ごはんマメ知識・こんなの知ってる?

Vol.10伝統行事で心に平安を
日本には正月を始めとするさまざまな伝統行事があります。
そしてその行事それぞれに伝統料理がついています。
今回は、「おせち料理」を通して、「伝統行事」を考えてみましょう。
お祭り気分もひと休み
昨今の日本の行事は、年ごとに増えています。新しい行事を、ただのブームだと部外者の顔をしていたら、翌年には伝統行事のようになり、時代に取り残されたような気にさせられます。特に、秋からの行事は目白押しで、ハローウィンに始まり、ボージョレヌーボー解禁の祝宴に、クリスマスイルミネーションの点灯式。さらに、大晦日のカウントダウンや除夜の鐘もかき消すほどの打ち上げ花火。クリスマスリースを飾ったかと思えば、片付けたその手で、松飾りと。キリスト教に神道、仏教、よその国の収穫祭までお祝いして休む間もなく、なんでもありの大忙しです。人々が幸せな気持ちになり、経済効果もあるのですから、お祭り気分で存分に楽しんでもいいとは思いますが、新年を迎えたら、少しは落ち着いて、おせち料理を味わうというような、古来からの伝統的な日本の行事に浸ってほしいと願うところです。
おせち料理を知っていますか?
今さら、こんな質問は野暮なことだと思いますが、簡単に説明しましょう。
日本のおせち料理の語源は、朝廷で行われた五節句の行事「節会」(せちえ)に供された供御(くご)から きています。五節句は一月七日に始まり、年に五回ありますが、なじみ深いものには、三月三日のひな祭りに、五月五日の端午の節句、そして七月七日の七夕があります。地方によっては、九月九日の菊の節句に菊祭りをする所もあります。庶民がお正月に御節料理=おせち料理を食べるようになったのは、江戸時代になってからです。昔は、季節や時を現代より神聖な目でとらえていましたから、おせち料理には、儀式的な要素が多分に含まれていたでしょうし、非常に厳かな気持ちで食していたことだと思います。
ほとんどの食べ物を一年中手に入れることができるようになり、季節感が薄れた現代でも、お正月のおせち料理 だけは、特別だと感じて食べる方も多いのではないかと、想像しているのですが、いかがでしょうか。
一膳のお雑煮
日本料理の中で、おせち料理ほど複雑で数の多いものはないでしょう。その中でもお雑煮の種類は、家庭の数だけあるといってもいいくらいです。関が原あたりを境に、西は丸餅、東は角の餅と分かれるようですが、だしや味付、具の種類に至っては、同じ県内であっても山側と海側では、まったく別というように、土地の産物や慣習とも関わり、ひとつの形に定めることは不可能です。家庭によっては、元旦は父親の郷里の味、二日は、母親の郷里の味と、まったく違うお雑煮を作るそうです。そこには、好みとは別の意味が存在するのだと思います。新年だからこそ、譲れない形式や頑なに守りたいと思うスピリッツを感じます。
一膳のお雑煮に、新たな決意で物思う。などと、大袈裟な意識はないのかもしれませんが、節目を大事にしてきた日本人の感性が呼び起こされているような気がします。
おせち料理・こぼれ話
おせち料理を食べる国は、日本だけではありません。日本と違って旧正月に祝う国も多いのですが、親戚や 友人が集まって賑やかなのは同じです。中国では、日本のお重のように仕切られた六角の回転盆に盛った6種類の料理を中心にお酒を飲んで祝います。日本と同様に地方ごとにその祝い方も様々です。
ワンタンや餃子を食べる所もあります。餃子は子孫繁栄の意味があるため、祝い事にはよく作られますが、箸で割って食べると縁起が悪いとも言われています。子孫繁栄の意味があることでは、日本の祝い肴の数の子も同じですね。そして、お料理の後には、麻雀が始まります。中国では、結婚式でもなんでも人が集まれば麻雀をします。お正月から麻雀やワンタンに餃子なんて、と眉をしかめそうな話かもしれませんが、新しい年の夢や希望を語り合い、家族や友人の笑顔を確認する素適な宴だと思います。
心の平安の素
行事には、それに合わせた食べ物がつきものです。食は文化と言われるように、人々の精神によって生まれ、育まれてきたものだと思います。それゆえ、少々堅苦しい形式があったりしますが、それらを面倒がってすべて排除してしまえば、文化は立ち消え、文明の発展もないような気がします。おせち料理は、形ばかりなので無駄。という声も聞きますが、現代人が無駄だと思うようなことでも、それを先人たちが大切にしてきたからこそ、今の豊かさがあるように思います。
お正月もおせち料理もカタカナ行事のような派手な演出はありません。それは地味と言うのではなく、厳かと表現するものなのだと思います。厳かさを体験した後に残る清々しさは、心の奥底に華やぎをもたらせてくれるように感じます。新年に得るその感覚が、一年を通して消えることなく、続いていくことを祈るばかりです。日本の伝統行事の中の食べ物には、心の平安の素が入っている。そう思います。


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